はじめて会ったのは血の雨の中。
私たちは一つの標的を目指し、達し、そして殺した。
それの肉片が塵となり、血がしぶきとなり私たちに降り注ぐ、その向こうに彼はいた。
それから彼は、
(それから彼女は)
死ぬほど殺したくて、
(それはいかなる感情だったのか)
でも
(その感情に名前をつけるならば)
「「殺したいほど、愛してしまった人」」
この手は赤に染まったまま、心を失い、身体は汚れた。
何もかもに絶望していた私が出会ったのは、ディープスカイブルーの瞳のあの人だった。
絶望にむせび泣いていた私に声をかけてきた彼は優しげに笑った。
「お前には似たものを感じるな・・同業者か」
胸にしん、と染みいるような哀しい声だった。
哀しい声、と思ったのは久々だった。
「心が、泣いている人を見たのは久しぶりだ・・俺はもう泣けないから」
哀しそうな声で、哀しそうな笑顔で、私に優しく微笑むその姿に何故だか切なくなって、胸がきゅうとしめつけられた。
「俺たちはただ殺すしかないのだ。生きる糧に。死ぬために。」
私たちは、背負ってしまったものが一緒だった。
背負った運命が一緒だった。
だからこそ、惹かれた。
血と肉と悲しみの匂いを背負って、それらは私たちを向き合わせ、引き合わせ。
そして殺すため。
「お前が殺したのか・・・我が主を」
そして私を殺すため。
そして貴方を殺すため。
「恨みはしない・・お前はなすべき事をした」
私を見つめる瞳はあの人同じように優しかったけれど、あの人はその空の瞳から涙を流していた。透明な雫はその頬を伝い、あの人の深淵の黒の服を色濃くした。
「だから、俺もなすべき事をしよう」
あの人は泣きながら、私に向けて拳銃を向けた。
カチリ、安全装置が外れる音がする。
「どうして出会ってしまったのかな・・俺たちは」
(出会うのが早すぎたのよ)
「そうか・・そうかもな」
彼は微笑む。あの穏やかな時間の中のように、微笑む。
「ならば、次の時代に会おう」
彼の指が引き金にかかる。
ああ、だいすきな貴方。そんなに泣かないで・・
「泣かないで」
彼が諭すような柔らかな声で言った。ああ、私も泣いているのね。
私も彼に銃口を向け、引き金に指をかけた。
「愛している」
(愛している)
「「バイバイ」」
ガウウウウンン・・・・・!
(せめて次に会う時には、笑顔で会えますように)