ダンスフロアのライトが妖しげに瞬く。

時にフラッシュのように。時に光線のようにまっすぐ。
虚ろな眼差しの人間達が世界を忘れて踊っている。『現実』という世界を忘れて、激しく踊り、奇声を発する。
ポールの上空で艶かしい姿態の女性が身体を生かして回っていた。





アルコールが飛び散り、グラスが割れた音が彼方で響く。
誰かが割ったのだろうか。関係のない事だが。
手元の液体をあおった。手の震えは、相変わらず身体と共に収まる気配もない。




誘いなど断ればよかった。
滅多に飲まないのだからたまには、と無理矢理新しく出来たバーに連れてこられて、いつの間にか連れてきた友人の影は消えていた。
ダンスフロアのどこかにはいるのだろうか。それとも出て行ってしまったのか。


どうもココはおかしい。

ぴりぴりと感じる空気が不穏な事を告げていた。
何故この空気が此処の人にはわからないのだろう?






先程から誰かに見られている気配が止まない。
何処からかは分からない。見られているという感覚しかない。それが怖ろしくもあった。
Tシャツの裾を軽く引っ張って直す。嗚呼まただ。

思い切って、顔を上げてフロアの方を見た。




―瞳。
ディープパープルの瞳。
否、それをもっと深くしたようなブルーに近い、パープル。

視線がこちらを向いていた。
瞬間にして眼が離せなくなる。

バーントアンバーの髪は軽くウェーヴして肩に堕ちている。
シルバーのアクセサリーと、纏う服は皆黒に統一されている。ぴったりとしたトップスに、ライダース。指にはまたシルバーのアクセ。
アーモンド型の目の奥にまるで宝石がはまっているんだろうかという、パープルは先程から視線を動かさない。

その視線を動かさず、彼がアルコールを呷った。
仕草が否に目に止まる。まるで存在が人を惹きつけるかの様だった。
案の定、傍らの肌も露な女性の手が蛇のように彼に絡みついた。彼はなすがままにしている。

彼がまた、グラスを口につける。液体が流れていく、彼の人とは思えぬほどの白い喉が上下する。嚥下する。

ぞくりと。

身体のどこかがそういう音を発した。

やがてグラスを置いた彼の唇が、ゆっくりと動いた。




Calling for your devil side





―そこから先の、私の人としての意識はなくなった。








(またの名をクラブV 帰ってきた人間の女は聞いたことがないね!)   











 BGM:VAMPS [DEVIL SIDE]            
→新曲発売を祝して。瞳はジャケのバックカラー。ディープロイヤルパープルと云います。解り易くするために敢えてこうしました。



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