[9  逃避行  ]
(RUNA&NOIR)


夜の捜査はあらかた終了したので、とりあえずお気に入りの店で2人で飲むことにした。
向かうために今はカインがドライバーをかって出た。もうライセンスがないのなどと騒がない事にする。騒いだ所で責任は自分にかかってくるのだし。
最近買ったこの車は排気も少なく、騒音もない。シャープなラインが気に入っている。
かくいう自分は助手席でうとうとしている訳であるけれども。
睡眠不足が祟ったか。車の揺れが妙に心地よい。

「眠っていいぞ」

静寂を破って、カインの声が響いた。
私はハッとなってかぶりを降る。
ふ、とカインが息を洩らしたのがわかった。

「強情だな。睡眠不足」

そう続いて、頭を軽く小突かれる。むぅ。いつもなら抵抗するのに、今日に限って眠くてそれすらも億劫だった。
くく、と笑う声がした。

「この無抵抗なまま、お前をさらってしまうのもまた一興、かもな」

トウヒコウ、ってやつかな。
カインのその呟きを最後に、私の意識は眠りに引き込まれていった。






                     [何もかも投げ捨ててこのまま君を連れ去って連れまわして愛せたなら!]









逃避行…世をはばかることがあって、あちこち移り歩いたり隠れ住んだりする事。





反省→意に反しております。





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