しばらく歩いた所で、唐突にシャトラールが唇に右手の人指し指を添え、そうだ、と今思いついたと言う表情をこちらに向けた。

「今回、パーティに参加するのは貴女を含めて6人。
後、4人の紹介がまだ出来ていないのですが、それは夕食の時にでもご紹介しましょうね」

「6人…随分と少ないパーティメンバーなのですね?」

思った通りの事を口に出して聞くと、彼はふ、と口元に笑みを含ませてどこか不敵に笑った。

「……それが、丁度いいのですよ」

「…?」

「……お気になさらず。僕自身が大人数を嫌ったまでの事。
見知らぬ貴女まで招いたのは…まあ、僕のめずらしい気まぐれ、と思ってください」

「…はぁ」

「…疑問もイロイロ残して歯切れの悪い事をしますけれども、僕は色々と秘密持ちなんです」


トン。

今まで彼の唇に添えられていた人差し指がいつの間にか自分の唇に乗せられていた。
真正面に来たそのベイビーブルーの瞳がしかとこちらを捉える。まるで宝石の様なその瞳に一瞬で視界を奪われる。
やがてその瞳の持ち主は真面目な表情から一転した天使の微笑みでこちらを見つめて笑った。

「……今は、許して下さいますね?」

「………はい」

その笑みに魅了されて息が詰まり、返事に一呼吸の間が生まれてしまった。なんだろうこの人は。とても不思議だ。

「さ、ルナ。そこの扉の向こうが、貴女がしばらく過ごすお部屋になります。
流石にレディの部屋までついて行くのもなんでしょうから僕はここで一旦お別れ致しましょう。
夕飯になりましたらまた御呼びしますので、それまではどうぞごゆっくりお部屋でお休みください」


レトロな木製のドアの前まで案内してくれた彼は、扉の向こうへ消えるまでその笑みを崩す事なくこちらを見送っていた。
扉を閉じた後に一つため息をつき、ルナはゆっくりと部屋の中に視線を向ける。
部屋は近代的な建物の外観とは裏腹にアールヌーヴォ―家具を基調として置かれていて、どこか一昔前にタイムスリップしたかのような部屋だった。
ふわりとした感触のベッドに腰を降ろし、そのまま後ろに倒れ込む。なんだかここ数日でいっぺんに色々な事が起きすぎて目が回る。
今の所見た感じだとマーフォーク一族で今の所会えたのは二人。一族の長でもあるシャトラールと、その弟のロイ。
まるで天使の様な二人に、あとどんな人間が加わるというのだろう。そして一族の秘密とは…

「……やめよう」

ボスン、と少しもたげていた頭をそのまま降ろし、つられて力無く腕を降ろす。
色々と考える事がありそうだが、今は色々ありすぎて脳が思考する事を拒否しかけている。


いつの間にかルナの意識はまどろみの中に落ちて、ゆっくりと沈んでいった。









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