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近代化したこの時代にも、宗教心を持つものは多い。
現にこの近辺だけでも6つほどの教誨(きょうかい)がある。今はその教誨も、数台のパトカーが止まり、野次馬がざわめいているが、それでも。
―いつの時代にもすくわれたい人間は多いのだな。
見上げてカインはそう思った。そうこうしている間にルナの方はさっさとKEEPOUTのロープをくぐり、教誨(きょうかい)のドアを1人で開けているところだった。慌てて後を追い、何とか身体を押し込ませようとする彼女の傍にたどり着き、ドアを開いてやる。
「入れたのに」
「そんな喧々(ケンケン)するなよ」
苦笑いして、自分も中に入り込んだ。
「ほぉう・・・」
精巧で繊細な創りの施されたゴシック様式。とはいっても、見た目自体がそんなに古くはないので、おそらくは新近代に入り建てられたものだろう。
そんな長い回廊を2人、並んで歩く。
コッ―ン。コッーン。
長く響く反響に耳を澄ませながら、不意にルナがこちらを仰ぎ見た。p
「教敵の処に、貴方は迷い込んでしまった訳ね」
そう言ってふっと笑った。
嫌味か。それも悪ふざけのような。
自身もその意を汲み取って、返してやる。
「人間の頃は世話になったかもしれないだろう?」
「遠い話ね」
「あっても忘れている。それこそ罰当たりだ。さて」
コッーン。
やがて突き当たった礼拝堂の大扉の前で、2人は立ち止まった。
「問おう、ルナ。神はこの呪われた肉が聖なる場所に立ち入る事を許すか否か」
ルナは自嘲するように笑った。
「否(YES)ね。まあその見返り、罰を受けるのは私も、なのでしょう」
「そうか」
彼がニヤリと笑い、そして最初の一歩をふみだした。
「ならば、共に呪われようか」
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