「つまり、犯人は捕まえたが、何者かの手にかかり死亡。灰は異種研に提出し厳重保管。という訳だね。カイン」
トントン、とデスクを指でたたいて、妙齢の紳士―オギは無表情にカインに視線を向けた。
警察課の最上階、執務室。ルナは肩をすくめながらカインの隣にいた。
まじめな時―いや彼はいつもマジメだが、こういう時のオギは何だか近寄りがたい雰囲気を醸し出していて口をはさめない。カインはといえばいつも通り飄々として、口元には笑みすら湛えていた。
「異論ない。その通りだ」
じっと、オギがこちらを見つめている。デスクについた右手に顎をのせ、しばらくそのまま何か考える表情をした後、ゆっくりと口を開く。
「・・・・生きた者の方がお前の罪の軽減もかなり見込めたろうにね・・まあ、終わってしまった事はもういい。灰の分析が終わり次第、お前の減刑の程度も追って知れるだろうよ。さて、ルナ」
ルナの方を見て、オギはニッコリと穏やかな笑顔を浮かべた。
「兎に角、良くやったね」
「あ・・はい」
時に、とすぐにカインの方に視線を向ける。
「カイン、久々の外はどうだった?」
「・・・悪くはなかった。今まで以上だったな」
「そうか・・・いいのかね」
ふう、とカインがため息をついた。顔を下げ、やああって諦めのついたかのように哀しい顔を上げる。
「言ってもだめなんだろう・・オギ」
「・・・・・・すまない」
オギはその瞳をじっと見つめた。そのアメシストをはめ込んだような瞳が何故だか暗くよどんでいる様な気さえした。
哀しそうだ、そう思った。
彼に対してそう思ったのは初めてだった。
どんな時も彼は飄々として、人間を愚かだと言い嘆いていた。だか、今の彼はまるで人間の顔をしている。
彼は何も言わず彼から視線を外し、確かめる様な間を取った後、静かに指を鳴らした。
パチン!
ジャラ・・・
次の瞬間にはカインの手首に、彼が彼女と出逢った日と同じ手錠がかけられていた。
その手首にかかった手錠を茫然とした顔で持ち上げて見つめて、彼はルナの方に向き直り、哀しげに笑った。
「終わり、だな」
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